もう遅い!

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もう遅い!

登った日がやっと辺りを照らし始めた早朝。 大きな道場の中、大勢の人が居るが辺りは静まり返っている。 大勢の人間が柔道着を着て周りで正座している。その中央で二人が立っていた。 一人は短髪でガタいのいい男。 だが、もう一人は、長い黒髪を結い上げた少女。 凜としたその瞳には目の前に居る男しか映っていない。 白い柔道着の中に一人、黒い柔道着を着た髭面の男が叫ぶ。 「始め!!」 その声で真っ先に男が前に出た。 「うおぉぉお!!」 自分の倍はある体格の男相手に少女の目に陰りが生まれることはなかった。 腹部を狙って来た拳を避け、相手の懐に入り、一撃。 正拳突き。 男はその一撃で体勢を崩し、床に膝をついた。 「それまで!」 制止の声で少女は男に手を差し出す。 「いい一撃でした」 「それは嫌みかい?」 「本音ですよ」 男は笑顔で言う少女の手を掴み、立ち上がった。 「相変わらず強ぇなぁ。また勝てなかった」 男はガシガシと頭を掻きながら苦笑した。 「またいつでもお相手しますよ」 「ああ。頼む」 二人は握手を交わし、その後居た全員がお互い向かい合うように座り頭を下げる。 『ありがとうございました!』 こうして早朝鍛錬は終わった。
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