~序章~

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2000年のひどく暑い夏、僕は彼女に逢うためにバスに乗っていた。   僕の名前は悠(ゆう)   いたって普通の高校一年生である。普通科に通う、ありふれた高校生の一人だ。   バスが駅に着く。   蝉の声が何重にも重なり合い、今年の夏の暑さを物語っている。   彼女の家までは歩いて五分程度の距離だ。   携帯を手に取り、電話をかける。   『もしもし。うん、俺。今駅に着いたから外出て待ってて。』   しばらくして彼女の家の前に着いた。   彼女は家の敷地内だというのに、日傘をさして待っていた。   『遅い!』   『ごめん。…って言っても二・三分の遅刻やろ?許せよ。』   『この暑さの中で女の子を二・三分待たす気ですか』   『はぃ。すいません。』   こんなたわいもない会話でいつも始まる。   彼女の名前は遥(はるか)。   僕と同じ学年、同じ高校に通う僕の彼女である。
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