~序章~

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『ま、いいや。行こ!暑いし。』   そう言うと遥はいつも右手を差し出し、aikoの歌を歌いだす。   『右手をつないで~♪』   『お前は本当に好きやなぁ…その歌。』   『だって繋いでくれへんやん。いつも。』   そう、僕はいつも自分から手を繋ごうとはしない。   特に深い理由はないのだが、恥ずかしさからなのか、手を繋ごうとはしないのだ。   『じゃ、いくか。』   と家までの数十歩を手を繋いで歩く。   彼女はそれだけで幸せなのだそうだ。   遥の部屋は二階にある。   家族に鉢合わせして、色々聞かれるのが嫌らしく、いつも玄関から二階までは小走りだ。   部屋に着くと、大体僕は遥の雑誌を読み出す。   会話は、いつも遥からだ。   『今月のモデル誰が好き?』   『ん?この子。』   速答すると、不機嫌になる。   『どうしたの?』   『別に~』   『…ヤキモチ?』   『違う~!』   なんて分かりやすい性格なんだろうといつも思う。
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