正体と絶望

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優しく、その滑らかな頬に手を宛がう。 「…………」 ひやりとした感覚。その冷たさは、到底生きている者の温度ではなかった。 「……レキ」 強張った喉で必死に絞り出した声。しかし、反応はない。 俺の持つ力があれば、理論上望めば何でも手に入る筈だ……筈なのに、現実では決してそうはならない。 何故なら、俺が《死者は決して蘇らない》と知って―――――いや、思い込んでしまっているからだ。 「……レキ」 再度、呼び掛ける声に震えが混じる。 『ぱぴぃ!』 レキを見つめる内に、温かな思い出に浸る内に、凍てついていた心に温もりが戻ってくる。 ゆっくりと心を温めていく感情は、同時に酷く冷たい痼を浮き彫りにしていった。 レキは死んでしまった。 人を殺してしまった。 二つの覆しようのない事実が、突き付けられる。 感情の濁流がせめぎあい、俺の心を激しく揺さぶり始めた。 「……うっ」 その内、心の堤防に亀裂が入り小さく嗚咽が漏れる。 そして、 「うわぁぁぁ―――――ッ!!!!」 ―――――崩壊が始まった。
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