14456人が本棚に入れています
本棚に追加
/222ページ
優しく、その滑らかな頬に手を宛がう。
「…………」
ひやりとした感覚。その冷たさは、到底生きている者の温度ではなかった。
「……レキ」
強張った喉で必死に絞り出した声。しかし、反応はない。
俺の持つ力があれば、理論上望めば何でも手に入る筈だ……筈なのに、現実では決してそうはならない。
何故なら、俺が《死者は決して蘇らない》と知って―――――いや、思い込んでしまっているからだ。
「……レキ」
再度、呼び掛ける声に震えが混じる。
『ぱぴぃ!』
レキを見つめる内に、温かな思い出に浸る内に、凍てついていた心に温もりが戻ってくる。
ゆっくりと心を温めていく感情は、同時に酷く冷たい痼を浮き彫りにしていった。
レキは死んでしまった。
人を殺してしまった。
二つの覆しようのない事実が、突き付けられる。
感情の濁流がせめぎあい、俺の心を激しく揺さぶり始めた。
「……うっ」
その内、心の堤防に亀裂が入り小さく嗚咽が漏れる。
そして、
「うわぁぁぁ―――――ッ!!!!」
―――――崩壊が始まった。
最初のコメントを投稿しよう!