第九章 真実はいつも冷たくて

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「そうか……そうだったんだな」  ずっと気になってはいた。茂が常々口にしていた『下準備』に関して。結局何度世界が滅ぶ事になってもそれらしき物が出てくる事は一度もなかった。  だが今考えれば普通にわかる。全てはこの時のための下準備だった事に……ヒントだった事に。  何故茂が明らかに必要がないのに……それなりの理由をつけてムイ達を研究所に連れてきたのか? あいつが学校に来て……本当は何を見ていたのか? どうして世界が滅ぶ最後の日にだけムイ達を衛星ステーションに呼んだのか……?  全部……全部俺に対するヒントだったんだ。 「ったく……一体どこまで先の先を見越して行動してんだよあいつ。どこまで天才なんだ」  普段はあんなにふざけた感じなのに……やっぱり英雄は凄いな。まあ……茂の知能が異常に優れてるだけだからかもしれないが。 「……よし! ようやくここまで来れたんだ……絶対に世界を……未来を切り開く。だから皆……力を貸してくれ!」  そう俺が聞くと、各々が頷いて元気良く返事をしてくれた。  ……今まで失ってきた存在を忘れる訳じゃない。俺が背負っている宿命から逃げ出すつもりもない。  例えこの先何度失敗したとしても、俺は突き進むしかない……ただ前に、世界が救われるその時が来るまで。  だからその時が来るまで……俺は絶対に忘れないだろう。俺の背負う宿命を。犠牲になってきた存在を……世界を。そして掛けがえの無い仲間がいる事を。 「ところでゼラスお前……あのエキセントリックバード、ヨゼフだっけか? どこに行ったんだ? ここにいないのか?」  …………はい? 「…………ヨゼフ?」  突然武史にそう言われ、俺は脳内の記憶をフル稼働させて必死にヨゼフという名のチキンヘッドを思い出す。  確か……俺が過去に行くためにタイムマシンを作動した時、外で悲鳴をあげていたような………… 「………………うん」  ……俺は絶対に忘れないだろう。俺の背負う宿命を。犠牲になってきた存在を……世界を。そして掛けがえの無い仲間がいた事を。
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