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 轟電(ごうでん)の主力兵装は、胴体下部の武装懸下装置(パイロン)に取り付けられた特殊対空爆弾タ弾(ただん)である。  タ弾とは、言うなれば空対空クラスター爆弾である。  多数の子爆弾を敵爆撃機上空前方からばらまくのだ!  当たれば、値千金。一気にB29 を7機(ほうむ)ったこともある。  しかし開発した陸軍では目視や勘で投下したために、対空戦果よりも地上戦果の方が高かった。  日本軍の濃密な訓練は、いつも計器や遅れた技術をカバーする、個人の技量を引き上げてきた。ノルデン爆撃照準器を秘匿兵器としてきた米国とは大いに違う。我々の祖先は血のにじむような訓練でを鍛え戦ってきたのだ。  本当に、本当に真面目に考えれば、かけがえのない命を単なる誘導装置として扱う特別攻撃『特攻』など愚の骨頂であったはず。  大日本帝国は自国の国民の気質に大いに頼る体質であったのだから……。  とまれ。  そんなタ弾だが、大日本帝国空軍専用機轟電には、対空運用するにあたっての秘策が、施されていたのだった。  
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