プロローグ

2/3
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
「もし、世界がいくつも存在したら?」 幼い頃、なかなか寝付かない僕達四つ子に突然父様が尋ねてきた。 それに対して僕達は、シーツから顔だけを覗かせて首を傾げた。 その頃の僕達にとって、それは難しい質問だったのだ。 すると、父様は優しく微笑んで再び話し始めた。 「世界は一つではない。私達人間が忘れているだけでな。」 父様の声は低く、まだ声変わりしていない僕達にとって憧れであった。 「父様、世界はどうしていくつもあるの?」 僕は、シーツの上で優しく、一定のリズムを刻む大きな手を見て言った。 「そうだな。ずーっと昔、世界が一つだったこともあるんだ。」 父様は、ゆっくりと話し始めた。 「えぇ!そうなの!?」 驚いた声を出したのは、奥で寝ている二人。 彼らは、僕達が四つ子であることを疑いたくなるほど、僕には似ていない。 そして、面白いことに、時々同じタイミングで同じ発言をする。 「ちょっと!一緒に言わないでよ!僕が先に言おうとしたのに!」 「違うよ!僕が先だよ!」 二人は、同じ事を同時に言ってしまうのが気に入らないらしく、何時も喧嘩を始めてしまう。 父様は、そんな二人を微笑みながら注意して、続きを話し始めた。 「本当だ。その時には、言葉を話したり、二本足で歩いたりする生き物は人間だけではなかった。」 「……どういうこと?」 その頃の僕達には、まだ少し意味が分からず、首を傾げて尋ねた。 「うーん、そうだな。分かりやすく言えば、犬や猫でも言葉が話せたんだ。」 「凄いね!じゃあ、皆でお話出来たんだ!」 その頃、動物と会話するのが夢だった僕は目を輝かせた。 父様は、そんな僕に優しい笑顔を向けると、僕達四人を順に見つめた。 「ファンタジーの物語は好きか?」 「ファンタジー?」 「そう。ファンタジー。魔法使いや、変わった生き物が出てくる物語だ。」 「好きーっ!」 父様の言葉に、僕達は一斉に答えた。 父様は、そんな僕達に微笑んで頷くと、再び続けた。 「お前達の好きな物語に出てくる生き物達も、この世界にいたんだぞ。まぁ、知らない生き物も少しはいたんだがな。」
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!