《5》

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  「こーんばーんはー!」 ドアのベルと共に軽快に現れたのは、千紘さんだった。 いつもならその元気の良過ぎる登場に苦笑しながら、『こんばんは』と返していただろう。 だけど自分の思考と向き合っていた僕は、ただ現実を認識しただけで反応が遅れてしまった。 そのことに気付いたのか、千紘さんは眉をひそめて僕の隣のスツールに腰掛けた。 「どーしたの響ちゃん? 何だか暗いわよ?」 「…そんなことないよ。遅かったんだね、仕事」 「そーなの! んもう退社直前に捕まっちゃって大変だったわー」 はあーっ、と長い息を吐き出した千紘さんの前に、コースターが置かれる。 「お疲れ、千紘。いつものビールでいいか?」 「うん、お願い翔くん」 「了解」 スマートな仕草でビールを注ぐ翔兄さんを横目に、千紘さんはまた溜息を吐いた。 .
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