《5》

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  「びっくりしたわー、さっき」 「…何に?」 尋ねた僕の方を指差した千紘さんが、目を細める。 「響ちゃんに!」 「僕?」 「そうよ!」 大きく頷いた千紘さんの元に、ビールが運ばれる。 「とりあえず乾杯しましょ!」という彼女に合わせて、グラスを掲げた。 ごくごく、と勢いよくそれを流し込んだ千紘さんが、「ぷはーっ」と息を吐き出してから言う。 「響ちゃん、最初に会ったときみたいに暗いんだもん、何事かと思っちゃったわー」 「…そんなこと、ないよ」 「ううん、暗かった! もう何のデジャヴかと思うくらい!」 そう言った彼女の視線に耐えられず、僕はそっと目を逸らした。 それが気に入らなかったらしい、千紘さんはさらに噛み付いてくる。 .
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