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「私物残してったんやろ?」 手当たり次第に室の中を漁ったのは一目瞭然な散らかり具合を指差すとこっくりと朔は頷いた。 「華南の制服と鞄……それとクロスだけがない」 「金目の物は?それだけやったら何処も行かれんやろ?」 「あ。カードで五十万くらい引き出してた」 「何処で?」 「んと、近くのコンビニ」 「いつ?」 「……一週間前」 「周到な……ってか、拐われたわけやあらへんやろうな?」 「それはないよ」 作動しなかったセキュリティだったが、監視カメラは作動していた。 芙蓉がひとりで脱け出す様が暗がりにうっすらと撮されているのを示すとフェンは朔に当たっても仕方がないと思いながらも思わず責める言葉が口をついて出た。 「もー……携帯も置いてっとるし!どうしてクロスにGPS埋め込んどかんかってん?」 「……後悔してる」 「肩があれやから左腕は使いもんにならんねで?何かあっても自分の身ぃ守るんも難しいやろに」 「わかってる」 「わかってへん」 「…………」 「芙蓉はお前の嫁なんやで?それが外彷徨いてるなんて格好の餌食や」 「ん」 「急ぐで」 「……ああ」
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