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幸継から芙蓉の一件の報告を受けた氷室は思わず膝立ちになる。
「何……?」
「貴方……」
「稀に見る出来た娘だと思っておったが……流石に折れたか」
試した張本人でありながら、期待した結果とは異なることに落胆を隠しきれずに呟くと事情を知らぬはずの綾乃が珍しく口を挟んだ。
「神威の軋轢に屈したわけではございますまい」
「綾乃……」
「私とて……ここで貴方と言う支えがなかったならばとても耐えられはしませんでした」
「……もしもの話は好かぬ」
憮然とする氷室に綾乃は負けじと言葉を重ねた。
「お好みでなくとも聞いていただきます」
「随分と芙蓉の肩を持つの」
「あの子は……甘え方を知らぬ子です。甘え方は知らぬくせに甘えさせ方ばかりは上手だったから懐かぬ朔をも警戒心を持たせなかった」
「……あれにはまた別な娘を立てればよい。そのように教育してな」
「されど。朔は芙蓉に出逢いました。オリジナルを知る朔に擬えただけのそれを示しても琴線に触れましょうか?敬遠こそすれ傍になぞ近付けはしますまい」
「…………」
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