試練

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 少年が居るのは薄暗い森で、鬱蒼と茂る葉に遮られて空を眺めることは叶わなかった。また、その足元にはあまり雑草が生えておらず、代わりに暗い色の苔があちこちを覆っている。  蒼い瞳の少年は、状況を確かめようと周囲を見回した。すると、一瞬ではあるが地面が上下に揺れ、彼は目を丸くして足元を見る。 「嫌だなあ……苔って滑りやすいのに」  そう呟くと、ダームは目線を上に向けて空を見ようとした。しかし、少年の居る場所からは太陽の位置すら分からず、彼は残念そうに目線を水平に戻す。それから、ダームは腰の剣に手を伸ばし、その柄を撫でながら言葉を漏らした。 「うーん……とりあえず、武器はあるから大丈夫かなあ?」  少年がそう呟いた時、先程より大きな揺れが彼を襲う。この為、少年は近くの木の枝を咄嗟に掴み、揺れが完全に収まってから手を離した。  その後、ダームは大きく息を吸い込んで頬を含ませ、数秒を置いてから息を吐いた。そして、再度周囲を見回すと、どこか不安そうに胸元に手を当てる。すると、彼の胸元に在る短剣は僅かに熱を帯びており、それに気付いたダームは自らの襟に左手を差し込んだ。  少年は、服の下から短剣を出すと鞘を眺め、それを装飾する宝石に手を触れる。
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