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「忘れてやれねぇけど、誰にも言わねぇから。な?」
「…分かりました」
諭すような口調の灰谷さんに、渋々頷きました。
灰谷さんなら本当に言わないでしょうし、おそらく大丈夫でしょう。
ここは、妥協する事にして。
問題は副会長です。
副会長に向き直ると、いつもの嘘くさい笑みではなく、何かを企んでいるような厭らしい笑みを浮かべていらっしゃいました。
目が合った一瞬で、いつもの笑みに戻っていましたが、見逃す筈がありません。
ため息をひとつ吐き出して、副会長が何かを言う前に、断りを入れます。
「言っておきますが、副会長はダメですからね」
「俺も人に言ったりしませんよ?」
「人には言わずとも、私をからかうつもりでしょう?」
「まぁ、無いとは言い切れませんね」
からかう気満々のクセに、よく言いますね。
そう言いたいのを我慢して――話がこじれそうですからね――微笑します。
「それに、忘れようと思って忘れられるようなものでもないのでは?」
「忘れたくなるよう仕向ける事は得意ですので」
ご心配なく。と小さく付け足せば、チッと舌打ちされました。
その間も作り笑顔を崩さないのは、流石といいますか、不気味といいますか…
あまり拝みたくないものであるのは、確かですね。
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