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春の暖かい風が、人々の中を掻い潜り、やさしく吹き抜ける。
その穏やかな気候の中、笑顔の人がたくさんいる。
新しく学校に通う、もしくは、進級した学生たち。
学校を卒業し、社会人となった元学生たち。
春から付き合うことになった、初々しいカップル。
そんな和やかな雰囲気を掻き分けるように、どんよりとした、セーラー服姿の少女が、とぼとぼと歩いていた。
ふんわりと緩いカーブのかかった明るく長い茶髪に、髪と同じ色をした綺麗な瞳、赤縁メガネをかけた、真面目そうな印章の少女。
はあ、と溜め息をついた。
少女、彩音疾風(さいね・しふう)は、今日の始業式を向かえて、中学二年生になる。
みんなが新しく変わるクラスや学校にうきうきと楽しそうにいるのと対照的に、疾風は暗く沈んでいる。
なんで彼女は、こんなにも沈んでいるのだろうか?
それは、沈んでいる当の本人にしかわからない。
再び、溜め息。
学校までまだ時間はかかるので、それまでに何回少女は溜め息をつくのだろうか。
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