1709人が本棚に入れています
本棚に追加
/273ページ
「あん?こんだけかよ?三万っつただろうが!」
ドグッ!
「がぁっ!」
今時いないようなギンギンの金髪にギョロっとした瞳、耳にはピアス、首には十字架の付いたチョーカーを巻いた鬼崎(きざき)の嘔吐しない程度に絶妙に加減された蹴りが深々と鳩尾に刺さり、僕は息が出来ずに地面に伏した。
「いつも言ってんだろ?お前は俺たちの奴隷だ。黙って俺たちの言うことを聞いてりゃいいんだよ。分かったかな?雪兎(ゆきうさぎ)ちゃん」
僕の名前を捻ったあだ名を嘲るように呼ぶと、取り巻きの二人がゲラゲラと下品な笑い声を上げる。正直耳触りだ。だけど、それを言葉にする余裕も勇気も僕にはない。やがて、鬼崎は僕の前にしゃがみ込むと、髪を掴んで引き上げた。
「明日は今日の分を合わせて五万だ。分かったな?」
「・・・・・・」
「分かったかって聞いてんだよ!」
ガッ!
「ぐっ!」
衝撃と共に目がチカチカする。口の何処かを切ったのか、血の味がする。
痛い。だけど、何処かそれも別のところで起きている事のように現実感がない。客観的というか、傍観者のように僕が殴られる僕を見ているようだ。
最初のコメントを投稿しよう!