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「もう、燐太くんには手を出さないで」
よく見ると加山の手が震えていた。
しかも、涙目で優人を睨みつけている。
「言われなくとももうしない」
「ぇ」
パッと加山が驚いた表情にかわり胸ぐらを掴んでた手を離した。
「ずっと謝りたかったんだよ。でも、コレとゆーひが仲良くしてるのを見た時、なんでゆーひの隣には俺じゃなくてコレがいるんだって。ホント、すごくムカついて。でも。結局、ゆーひを傷つけるはめになったんだけど。わかってるんだよ。最低なことだって。でも、止められなかったんだ。」
コレと言われているがそれは今はいいや。さっき、優人が見せたあの表情はやはり、少しは反省しているということだったのか。
しかし、俺は許さない。加山をあんな怯えさせてしまうほどに酷い事をした事。
今すぐ殴ってやりたい。でも、そんなことしたら加山が困るし、きっとこわがるから出来ない。それ以前に縛られてるから何も出来ないけど。
腹が立つ。全然気づけなかった。
ごめん、加山。
「優人っ」
ビクッ
え、なんだよ。
誰だ。あれ
「健二ってめ、なんでここにっ」
「お前の様子がおかしいから、明らか怪しい黒い格好した盛岡に聞いた。なにやってんだおまえ」
そう言っては早足でこちらに近づく健二と呼ばれた男はものすごい難いのいい厳つい男だった。ソイツの拳には血がついている。
黒いやつって俺ここに運んできたやつだよな。
あの血…殺ってないよな。
「ふ、ふざけんなっお前帰れ」
「嫌だ」
優人の顔は赤くなり、健二から遠ざかる。
しかし、健二はズンズンと近付く。
加山があわあわと涙をたらし震え上がっている。
「カヤマ」
「ぁ、縛られてたのおお?」
小声で呼ぶと加山は俺の元へ腰を低くし近づいてきた。
どうやら、俺が縛られていたことに気づいていなかったらしい。
「この展開はいったいなんなんだ」
「俺にもさっぱりだよ」
手足を固く縛られてたはずの太いロープを数秒でとくと俺の後ろに隠れたまま震えている。
すごい、固く縛られてたのに、こんな太いロープなのに……数秒で。
いや、それより。どうするこの状況。帰っていいのか?
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