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高校のクラスメートの女子が全裸で僕をベッドに押し倒している。
彼女を家にあげた時点である程度こうなることは予想していたが、実際になってみると頭が状況に追いついて行かない。
僕は軽く混乱しながら彼女の顔を見上げた。
どこか遠くから聞こえて来る消防車や救急車のサイレンの音が忙しそうな他人面で、静まり返った僕の部屋を通り過ぎて行く。
彼女は僕の腰に座ったまま片手で濡れ羽色の黒髪を耳にかけ、窓から差し込む柔らかい午後の日差しに凛々しい横顔と首筋のホクロをさらした。
「驚いて声も出ないってヤツ?」
彼女はそう言って微笑んだ。
清純そうな顔立ちに似合わない、生々しい色香を含んだ微笑。
まさか彼女がこんな口調で喋り、こんなふうに笑うとは想像もつかなかった。
「照れちゃってるのかな? かーわいい」
僕が放心しているのを見て彼女はくすくすと笑いながら、僕の体の上を這うように顔を近づけて来た。
しっとりとした体温が重みを伴って僕の体に染み込んで行く。
女子特有の甘ったるい匂いが絡みついて来る。
ベッドに縫い付けられた僕は、蜘蛛に捕らわれた昆虫の気分だ。
「これからどーしてほしい? 好きなようにヤッたげるけど」
涼しい目をして、上品な形をした唇から零れたとは思えないような挑発的な声で、彼女は囁いた。
感覚を麻痺させるようなこの声、まるで毒だ。
このメス蜘蛛は僕の耳に毒を流し込んで骨まで溶かした後、全身の体液を一滴残らず搾り取るつもりでいるらしい。
並みの昆虫ならばそれでイチコロだろう。
しかし、幸運なことに僕は昆虫ではなく、ただの人間だった。
「重い、どいて」
「へっ?」
キョトンとして気の抜けた声を漏らした彼女を軽く押しのけて、僕は起き上がった。
いつの間にかシャツが第四ボタンまではずされている。
僕はボタンをかけ直しながら、肩ごしに振り返って彼女に話しかけた。
「さっさと服着れば? 風邪ひくし」
「…………。えーっとぉ……」
彼女は絶句していた。
よほど自分に自信があったらしい。
しばらくは受け入れ難い現実をどうやって処理しようかとこめかみに指を当てて悩んでいたようだったが、やがてポンと拳で手のひらを打ち、彼女はとてもいい笑顔で僕にこう言った。
「もしかして、男しか愛せない系?」
「いや違うから」
僕は若干食い気味に彼女の問いをぶった切った。
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