雨の日

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2ヶ月前の4月、このアパートの隣にある、茶色いレンガ作りのアパートに越してきた。 今日まで何度か雨の日があったけど、あの部屋の主はけっこうな確率で洗濯物を干したままでいる。 毎回雨ざらしの洗濯物は少し可哀相だった。   ゆらゆら動くシャツを横目で見過ごし、隣にある自分のアパートへ向かう。 玄関の下駄箱に濡れた傘をかけ、廊下で服を脱ぎ始める。    濡れたストッキングが気持ち悪い。   洗えるものは洗濯機に放り込み、下着姿になって部屋へ戻る。 部屋着に着替え、長い髪をお団子にした。ソファに腰をおろしながらガラステーブルの上にあるリモコンを押す。 いつも同じ、一連の流れ。     ドォン!!!!     少し反応の遅い地デジがつくと同時に外で轟音が鳴った。  軽く心臓が跳ねあがる。   直後、一気に雨音が強くなった。 『ザー』という擬音語そのままの音が室内にも伝わってくる。     フとまた、あの外で揺られた洗濯物を思い出す。      …そういえば、義邦先輩も一人暮らしだ。     大好きな笑顔がポンと浮かんだ。 私のするちっちゃな質問にもいつも笑顔で答えてくれる優しい優しい3つ上の会社の先輩。    彼ならきっと、ちゃんと天気予報もちゃぁんと確認して、真っ青に晴れた空に向かって洗濯物を爽やかに干すに違いない。    あの太陽みたいな笑顔には、晴天がよく似合う。 太陽の下、広がる芝生の公園を思い浮かべた。 叶うならいつか、お日様の下、一緒にピクニックなんかしてみたい。 飼ってもいない犬を登場させ、二人と一匹でシートに寝転がるところを想像した。
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