第三編・護衛は一分後に立ち塞がる

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 『1.人物描写について』と、ホワイトボードに書き込まれて行く様子を、俺は肩肘を付いて眺めていた。  せっせと水性フェルトペンを動かし、一生懸命にボードに文字を書き込んで行く部長の姿は……何とも。  中間考査という名の戦場で、赤点スレスレという撃墜まじかの低空飛行を何度も何度も繰り広げた俺。その心は酷く痛んでいた。そう傷付いていたのだ。  そんな訳だが、その荒みも彼女の姿を見ているだけで、幾分か癒された。  つまり、それぐらい可愛らしいと言いたいのである。  まるで極楽浄土に居るかのような気分だ。が、此処が旧校舎の一室であり、俺達の部室であるという事実は変わる事を知らない。  「文姫ちゃん。何か意見ある?」  幼さの残る部長は、その童顔に笑みを乗せる。そして、その黒の双眸を俺の隣へと向けらた。  姫先輩に、だ。  羽毛のように柔らそうなブラウンの髪を引っ提げる白肌の彼女は、グッドなスマイルを浮かべ、答える。  「私的(してき)には、良かったように思えました」
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