Ⅶ.奇禍

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「……そうか、今日から夏佳もこの学校になるのか。あとセっちゃん言うな」 「うん、色々あってな……」 よくわからなかったが、この夏佳ちゃんという子も、俺たちと同じ、授転生術者ということだろう。 俺たちには聞き慣れない関西弁も、とても流暢に思える。関西出身なのだろうか。 「よし」 セトラスが一声吐く。 「とにかく、こんな状況になってしまったものは、もうどうしようもない。夏佳は自分の教室に早く戻るんだ。後少しでルーイクも閉じる」 「わ、分かったで!」 そう言って身を反転させると、たたたと走り去っていった。 「あ、夏佳、後で天界に来るようにな!」 セトラスの声は恐らく届いているだろう。彼女を見送ってから、俺は口を開けた。 「セ、セトラス、俺たちはどうすれば……」 「武器を仕舞って着席してろ。ルーイクが閉じたら、間違いなく大パニックになる。一段落したら、必ず天界に来い。今回の戦闘報告と、あと夏佳を正式に紹介する」 「……分かった」 「分かりました」 俺も卓磨も、冷や汗が止まらない。何せ、起こるのが確実に分かっているパニックを、ただ何もできず、それが来るのを待つしかないのだから。
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