Ⅶ.奇禍

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「……君は――」 オレンジの髪のサイドテールを揺らし、こちらに視線を投げかけてくる彼女は、あたふたといった様子で続けた。 「あの、ウチがもっと早くに来てたら、こんなことには……」 「えっと、どちら様……?」 卓磨の呼びかけに、少しだけ肩が跳ねたようだった。 「あっ、うん、南帆(みなみほ) 夏佳(なつか)って言うんやけど、えっと……」 「大臥ー! 卓磨ー!」 その彼女の声を遮るようにして、いつも聞く声が耳に届く。 「セトラスだ」 卓磨もうん、と頷いた。その直後、飛び込むような速さで走って教室に入ってきたのは、やはりセトラスだった。 「うわ……、これはまずいことになったな」 教室の惨状を見るなり、彼はそう言い放った。 「すまん……、思うように戦えなかった」 「すいませんセトラスさん」 相次いで謝る俺達に続き、 「か、堪忍してくださいセっちゃん……」 ちょっと呼び名が気になったが、夏佳ちゃんもセトラスに向けて言う。
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