BARにて①

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カラン―― 氷の溶ける音がする。 飲まないまま汗をかいたグラスが、客の前に置かれていた。 barでの客は、わけありの場合が多い。 いろんな会話が聞こえてきても、聞こえないふりをするのがバーテンダーの鉄則だ。 今日もまた、わけありの客がカウンター席に座り、くだを巻いてる。 またあの女の子だ。 すぐに不倫とわかるような、中年の男性と待ち合わせをしてる。 可愛い顔をしているわりに、どこか男を信じてないような、そんな不思議な女性だ。 中年男性が現れて、彼女を連れて帰っていく。 きっと、このホテルの部屋を取ってあるんだろう。 父と娘ほどの歳の差がありそうなこの二人が、どんな夜を過ごすのか、少しだけ興味があった。
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