【番外編】犬も食わないナントやら。

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「ふ、ふんっ!」  私は鎌谷さんの後ろ姿に向けて鼻を鳴らした。何故鎌谷さんが怒るのだ、怒るべきは私のほうなのに。仕方なくひとりでアパートに帰る。作りかけだった夕食を仕上げてひとりで食べた。鞄の中の携帯が鳴る、私は鞄に手を伸ばしてそれを取り出した。 「“週末限定セール”……」  メルマガだった。私は携帯を閉じてテーブルに置く。鎌谷さんから謝ってきたら許そうと思った。昔からの知り合いみたいだし、昔話をしてたのかもしれない。移り香もカフェの空間でたまたま付いただけの可能性もある。私は携帯を眺めた。 「……」  鳴らなかった。 「ふんっ!」  夕食を終え、片付ける。鳴らない。ひとりてお風呂に入る。浴室から部屋に戻ってきて着信を知らせるランプはついてなかった。 「……」  結局、その晩、携帯は鳴らなかった。
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