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「無事に帰って来れたらな」
ロアがそう応えた時、先頭のアサドから通信が入った。
「……ガッ……前方…に敵機、目…視にて確認……」
「来やがったか」
ロアは前方を見たが、まだそれらしき影は見当たらない。
アサドは隊の中でもずば抜けて視力が良い。
だが、ロアの視界がグレーの機体に赤い旗を掲げた敵機を捉えるまでにそれほどの時間を必要とはしなかった。
お互いにかなりのスピードで飛行しているのだ。
ロアが足漕ぎ式連発銃のペダルに足を乗せると、急にユーフーの高度が下がり始めた。
「なんだ?」
「……ジ…先輩…どうしたんですか……」
スピーカーからラウの声。
「わからねぇ! お前は敵に集中しろ!」
「先輩!」
「大丈夫だ!」
ロアはそうは言って通信を切ったが、高度はどんどん下がり、プロペラの回転音が安定しなくなる。
「クソッ! 連邦政府め! 良い資材が回せないならせめてもっとマシな整備士ぐらい寄越しやがれ!」
悪態をついてみても状況は変わるはずもなく、ロアのユーフーはどんどんと死の谷へと近づいて行く。
「く……不時着するしかねぇ!」
ロアは死の谷を睨み付けて操縦桿(そうじゅうかん)を握りしめた。
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