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両手で握り締めた操縦桿を目一杯左に切ったが、浮遊機関が機能していないために、いつものようには操縦がきかない。
ユーフーの飛行速度よりも落下速度の方が圧倒的に早いのだ。
赤く切り立った巨大な岩が、ロアの目の前にぐんぐんと迫って来る。
あんな物と正面からぶつかれば、いくら装甲の厚い機体でも木っ端微塵になる事は間違いない。
装甲どころか、ご丁寧に整備士の人件費まで安く仕上げたユーフーなど跡形も残らないかもしれない。
やっとこさ効き始めた操縦で、機体が徐々に左に傾き始めた。
「間に合いやがれ!」
ロアは操縦桿が千切れるのではないかと思うほど全体重を左側にかける。
持ち上がった右の翼が、わずかにタバコの箱一つ分で岩を避けた。
「今度はこっちかよ! 間に合わねぇよバカヤロー!」
岩を避ける事に集中している間に更に高度が下がり、地面が目の前に迫っていたのだ。
とても体勢を立て直すだけの余裕はない。
「こうなりゃもう一か八かだ!」
ロアは重心を更に左側へと傾けた。
左の翼が地面と接触し、赤い土を削り取った。
ロアのこめかみを冷や汗が伝う。
「おおおぉぉぉ!!!!」
次の瞬間、激しい音とともに翼の尖端が折れ曲がった。
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