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「……っててて……」
ロアはガンガンと頭痛のする頭に手をやって、癖毛の中に指を潜り込ませた。
目を開けると視界がぼやけている。
それほど長い時間ではないようだが、どうやら気を失っていたようだった。
ゴーグルを外して何度か目を擦ると、徐々に視界がハッキリとしてくる。
右側に青い空、左側に赤い地面。
「助かったのか……?」
シートベルトを外すと、どさり、左腕から地面に落ちた。
「いってぇ! こんだけ痛けれりゃ死んじゃいねぇな……」
ロアは左腕を押さえて立ち上がった。
ユーフーは右の翼を空に向かって垂直に立て、千切れた左の翼は、後方で芸術家が自慢気に発表するワケのわからないオブジェのような形に姿を変えている。
機体を水平にしての着陸が間に合わないと判断したロアは、墜落時に左の翼をクッション代わりにして衝撃を和らげたのだ。
戦闘服に付いた赤い土を払い、抜けるような青空を見上げる。
上空では緊迫した戦闘が繰り広げられているが、ここには壊れたユーフーからゆらゆらと立ちのぼる呑気な煙だけである。
「どうしたもんかね……」
ロアは空を見上げたまま、自嘲気味に笑って頭を掻いた。
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