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辺りには赤く巨大な岩や絶壁が切り立っており、仲間に合図を送ろうにも、それらが邪魔をして上空からでは視認する事が難しいであろう。
ロアは横向きになったユーフーのコックピットに頭を突っ込み、無線連絡機の通話ボタンを何度か押してみる。
「やっぱりダメか……」
声どころか、あの耳障りなノイズすら聞こえてこない。
唯一の目印となるのが、ユーフーから立ち上っている煙である。
だが、その煙までロアを嘲笑うかのようにプスプスと消え始めた。
「あ~あ。ダメだこりゃ……」
ロアは癖毛を両手でかきむしり、ゴロンと仰向けに寝転がって空を眺めた。
戦闘服を着た背中と髪に赤い砂がつく。
特に面白い人生でもなかったが、特にやり残した事もなかったなどと途方に暮れていると、横目にチラリと黒い物が見えた。
「うん?」
寝転がったまま首だけを右に向けた。
切り立った絶壁に、ポッカリと穴が開いている。
大人の男が立って入れそうな大きさの穴だ。
ロアは立ち上がって砂を払うと、その穴に近づいてみた。
中は真っ暗で奥の方は全く見えず、どこまで続いているのかは分からないが、自然の物ではなく人工的な物に見える。
「なんだ? 地獄への近道か? 特に良い事もしてないが、それほど悪い事もしてないと思うんだがな……」
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