夜鳥"ユーフー"

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薄暗い部屋には二段ベッドが両脇に置かれ、床には誰の物かもわからない上着や私物が所狭しと散らばっている。 部屋全体がわずかに揺れており、天井から吊り下がった電球がゆるく弧を描く。 ブーツの硬い足音が部屋の前まで近づいてくると、ガチャリと音を立てて扉が開かれた。 部屋に入って来た男は緑色の軍服に身を包み、筋肉で盛り上がった肩と黒く濃い口髭が印象的である。 「ロア。起きろ」 男がぶっきらぼうにそう言うと、右手にある下のベッドがもぞもぞと動いた。 「ロア」 男がもう一度名前を呼ぶと、くたびれた毛布が持ち上がり、目の開ききらない癖毛の男が顔を現した。 「アサド部隊長……さっき交代して仮眠室に入ったばかりですぜ……?」 ロアは黒い癖毛をかきながら大きくあくびをする。 年の頃は三十ほどであろうか。 長いまつ毛に伸びはじめた無精髭、細身ではあるが脆弱という程ではない。 「帝国が動き出した」 アサドがそう言うと、ロアはため息をついてベッドから体を起こす。 アサドが部屋から出て行くのを見届けると、ロアはもう一度ため息をついて手元にある軍帽を頭に乗せた。
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