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「しっかし、誰からのメールだったんだろうなぁ……?」
新居への荷物の運び入れを手伝ってくれていた達也さんが、そう言って首をひねるのは何度目だろうか?
「おまえ……しつこいぞ……」
目に笑いを浮かべ、晋太郎さんは呆れたように首を振った。
「でもさぁ……」
あの、結婚式の日。
「コレ、おかしいっスよ。途中で切れてますもん」
そう言って達也さんが見せてくれた映像には、口元に笑みを浮かべた晋太郎さんが大写しになって……。
カメラを奪った彼が悪友の首根っこをひっつかみ、例のケーキに埋もれさせるという衝撃映像が写っていた。
絶対、彼女には見せるな、と晋太郎さんに釘を刺されたものの「パーティーに出席できなかった仲間に笑撃をおすそわけっ」と、酔った勢いで達也さんは知人友人仲間うち、はては二次会の出席者にいたるまで一斉送信しちゃったらしい。
そんな自分の落ち度については、恩師でもある森田先生――お義母様にギュウギュウに締められたこともあって、かなり反省してくれて。
今日ははそのお詫びの肉体労働に来てくれている。
少し軽はずみなところもあるけれど、悪い人ではないのだと私にも分かってきた。
今も「挙式前でもって、妊娠初期の超ナイーブな花嫁さんにっ」と我が事のように怒ってくれている。
「もう良いですよ。私は大丈夫ですから……」
実家から荷物を運び出す直前に、私の手元に届いた一通の封書。
その中身を見て、私は微笑んだ。
横から首をのばした晋太郎さんが、ポンッと私の頭を優しくなでる。
父も弟も、そして彼も許してくれるから、いつか私は私を許せる日がくるだろう。
封筒の中には「ごめんなさい。お幸せに」と書かれた便せん一枚と、安産祈願のお守りが入っていた。
◆◆終◆◆
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