本日は晴天なり

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「ウルくん……もう一回ワガママ言ってもいい……?」 「俺に出来る事ならなんだって」 繋いでいた小さな手に、ギュっと力が込められる。 「眠れるまで……このままでいてくれると……すごく嬉しい……」 「うん。お安い御用です」 ウルは楽しげに笑うと、首を縦へと振る。 そんな彼の返答が嬉しくて仕方ないのか、ルナシアは赤くなった頬を隠すように布団を深く被った。 ――ウルくんってやっぱりすごい。 あんなに怖かったのに。あんなに不安だったのに。 たったこれだけのことだけで、すっかり安心してしまう自分がいる。 再び訪れた、まるで温かい何かに包み込まれるような大きな安心感に、ルナシアの意識は次第に薄れていく。 「……ウルくんの手……やっぱり大きい……」 「うーん。ルナちゃんの手が小さいからじゃないかな?」 「ううん……男の人の手。とっても頼りになる……優しい……手……ウル……くん……の……ウルく……」 段々とルナシアの話す言葉が途切れ途切れになっていく。 「ルナちゃん?」 そんなウルの問いかけに返ってくるのは、スースーという小さな寝息。 眠っちゃったんだな、とウルは優しく微笑むと自分も目を閉じる。 「……だい……すき……」 「へっ?」 それは不意打ちとも言える一言だった。 条件反射の如くウルは思わず飛び起きると、その声の発信先へと目を向けた。 顔を隠すように布団を被り、幸せそうな寝顔を見せる少女が一人。 「ル、ルナちゃん……今のって……」 「ふへへ……すーすー……」 ムニャムニャと既に寝言を言っている。やはり完全に意識はないはずなのに。 「手のこと……それとも……」 ウルは数秒黙った後、頭に広がるモヤモヤを吹き飛ばすように自分の髪の毛をくしゃくしゃといじる。 そして次に繋がっている自分の右手を見つめた。 ――小さな手。 それがぎゅっと離れないようにと握られている。 ウルは一度ため息を吐き出すと再び横になる。 自分の左手を自分の胸にあててみる。 心臓の鼓動はトクリ、トクリと、いつもと変わらぬ速さで動き続けていた。
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