本日は晴天なり

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隣で眠るのは、およそ自分なんかとはつり合うはずの無い本当に可愛らしい女の子。しかも二人っきりで一つ屋根の下。 少し前だったら、まさかこんなことが本当に自分の身に起こるなど考えもしなかっただろう。 ある意味夢のようなシチュエーション。確かに当初はそんな淡い期待に胸を膨らませていたような気もする。 だが少女達と過ごす時間が長くなれば長くなるほど、少女達のことを知れば知るほどに、そのことは頭の中から抜けていく。 その気になれば今すぐにだって。求めようと思えばきっと……。 しかし ――大切に思えば思うほど、反対にその感情とは遠ざかっていく。 今のウルは恐らく、自分が誰かと恋愛感情で結ばれるなど全く考えていない。 いや考えられない。 彼はゼノに対して戦うことを誓った。自分の為にも。大切な人の為にも。 先ほどリーシャに語った様に死ぬつもりなどない。諦めるつもりもない。ただ、あの強大すぎる彼らに対して何の犠牲もなく勝利を得られるとも思えなかった。 いつもふざけた態度ばかり取ってはいるが、その内心はどうしようもないほどに真面目な彼は、そんな危険な立場にある自分が特別な人を作る資格などないと無意識の内に思い込んでいる。 心配をかけたくない。ましてや一人残してしまうようなことさえあるかもしれない。幸せに出来る保証がまるでない。自分は絶対にそういう人を作ってはいけない。そもそも人を好きになる資格がない。 しかしこれはあくまで彼の無意識の中での考えである為、ウルはなぜ自分が今の状況でもこんな反応しか取れないのかを少し疑問に思っていた。 『男としての終わりが近いぞ』 そう言えば以前隊員のクダンからこんなことを言われたっけ。自分は彼女達のことをまるで妹や娘のように思ってしまっていると。 「隊長の次は魔法使いに就職かもな。はは……笑えねぇ……」 ウルは布団の中でそんなことを呟いた後、もう一度隣にいる少女の方を向いた。 ――ただ、もし犠牲なくこの戦いが無事に終わって、その時に自分のことをそんな風に想ってくれる人がいたのなら……自分はその人にどんな感情を覚えるのだろう。 『……だい……』 不意に浮かんだ疑問とあの寝言に、ウルは顔を隠すように布団を深く被った。 「ぅぅ……何考えてんです俺のアホ」 そんな隙間から見える彼の肌は、さっきと違い心なしか赤く染まっているようだった。
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