ここに一つの嘘がある。

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 出会いは突然だった。 「あの」  と、唐突ながらも控えめな声が僕に降って来たのである。  夜の街並みの中。どことも知らぬビルの足元に手持ち無沙汰に、俯いて佇んでいた僕は、その声のした方へと顔を向ける。  誰だ、と思った。  こんな僕に声をかけるような奴は、どこのどいつだ、と思った。 「すみませんが、少し、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」  微かに顔を上げて確認すると、声の主は女性だった。仕事帰りなのであろう、程好く型崩れしたスーツにその小柄な体躯を納めている。彼女の後ろから差す光のせいで顔を見る事は出来ないが、体型を見れば大体判断出来る。  肩辺りで揃えられた、街灯の光を艶かしく反射させる髪が、彼女が首を傾げた拍子に微かに揺れた。 「? ……あの」  黙り込んでいた僕に、怪訝そうな声を漏らす。 「ああ、いえ……少し驚いたものですから」  取り繕うように、そう言葉を返しておく。  とはいえ、驚いたというのは本当だった。まさか、僕に話しかけてくる人が居ようとは全然想像していなかったのだ。それもこんな、顔も覗く事が出来ないくらい俯いている奴に話しかけようと思うとは、ちょっとばかし肝が太い。 「それで、お尋ねしたい事とは?」 「はい。えっとですね……、お墓の場所を」 「お墓、ですか?」  それはまた……、こんな時間に?
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