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そこには何もなかった。
上下左右の存在しない空間。
真っ暗な闇に沈んだ世界。
そこに佇む、三つの人影。
皓い衣を纏った者が口を開く。
「ここがいいわ」
柔らかな紅い髪がふわりとなびいた。
薄いヴェールを身につけた者は答える。
「えぇ、とても美しいわ」
桃色の口紅が笑みの形に変わる。
瀟洒なローブを引きずって、最後の者が紡ぐ。
「ならば、此処こそが、私達の惑星―ほし―」
優しげな眼差しが何もない空間を見つめる。
そして、三人の声が唱和した。
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