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ここでまたひょっこり猫耳と尻尾が出現する。それを揺らしながら、素の時では考えられない甘え声で接客に向かっていった。
彼女の名は三毛崎猫子(ミケザキネコ)。大介達の同級生で、言技は“猫をかぶる”。ランクは“梅ノ中”である。
ことわざ本来の意味は、多少ニュアンスの違いはあるが早い話が“ぶりっ子”である。その能力は見ての通り、本性を隠した態度を取ると猫耳と尻尾が生えるというもの。つまり、周囲には可愛子ぶってることがバレバレということだ。
しかし、ここはメイド喫茶であり、猫耳との相性は抜群である。この組み合わせが男性客の心を大きくくすぐり、猫子はメイド人気ナンバーワンの座についている。
嘘だろうが何だろうが、男とは萌えられれば何でもいい生き物なのである。
「さて、話を戻すわよ」と育が委員長らしく場を纏める。
「まず、現時点での告白は無理。そのためには照れ屋な部分を直す必要があるわ。でも、ここでのバイトは無理。よくよく考えれば、下手したらこの店潰しかねないものね」
「返す言葉もないです」
肩を竦めて、照子は育の意見に同意した。
「うーん、困ったね。アドバイスしようにも、私には恋愛経験がほとんどないですし」
「叶ちゃんに同じくー」きずながショートケーキを口に運び「育ちゃんは?」と話を振る。
「委員長たるもの、不純異性間交流をするわけにはいかないわ」
「ほほう。せっかく立派なものをお持ちなのに」
「立派なもの? それって何かしら?」
身を乗り出した育の胸元で、その立派なものがぶるんと揺れる。きずなは親の仇を見るかの如くその立派なものを睨みつけた後、「教えてあーげないっ」とふてくされてしまった。
「皆さん私なんかのためにごめんなさい。瀬野君にも明日謝らないと」
「瀬野なら心配ないわ。丈夫だもの」
「あの大介君を気絶させる照子さんの言技って、よく考えると凄いね」
照子は先ほどからひたすら頬を赤らめるばかり。解決の糸口すら見つからない作戦会議。一番の痛手は、やはり恋愛経験者の少なさであると思われる。
「ねぇ皆」ふてくされていたきずなが、後方を見ながら口を開く。「三十手前の大人なら、ある程度恋愛経験もあるよね?」
「それなら私達よりはいいアドバイスをくれるかもしれないわね」
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