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やがて、看護士らしき白い制服を着たスタッフが、少年たちにパンとジュースを与えてくれた。
少女は一日ぶりの食事を口にしたが、少年はパンもジュースも看護士に押し返した。
「目の前で、苦しんでいる人たちの声を聞いていたら、気持ち悪くて食べられません。」
看護士はそれでも少年に食べて欲しいと頼んだが、少年は頑として受け付けない。
「……どうせ、僕らも放射能で死ぬんだから。」
「ホウシャノウ?」
何も知らない少女を軽く鼻で笑ってから、少年は冷たく教えてくれた。
「目に見えない悪い光線みたいなものさ。何年か前、福島で原発事故があった時、散々話題になったろう?」
「でも、どうしてそれが、わたしたちを殺すの?」
少年は両手を広げて、呆れながら説明した。
「昨日の爆発は、原子爆弾だったんだ。次は放射能の恐怖にビビる番だ。」
なぜか少年は、歪んだ微笑みを浮かべていた。
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