第10章

3/26
467人が本棚に入れています
本棚に追加
/651ページ
通路の壁を伝うように歩く森本を慌てて支える。 「全然大丈夫そうに見えないんだけど。残ったって、その調子じゃ稽古は無理だろ?」 そう声を掛けると、また無理して笑顔を作る。 「皆、心配し過ぎなのよ。熱はなかったし、横になれば治まると思う。」 公民館のロビーまで移動すると、森本を長椅子に座らせる。 彼女はそのまま倒れ込むように横になった。 一人にしておくのが心配で、森本の向かいの長椅子に腰を下ろす。 ロビー横の管理室に居た小林が出てくる。 静かに俺に近付くと、調子悪いのか?と森本の方を見て尋ねてきた。 小林の声に反応し、森本は身体を起こそうとする。 彼は、それを制すると、一旦管理室に引っ込み、手に毛布を持って戻ってきた。 「公民館のもので良けりゃ使って構わんよ。」 俺は小林に礼を言い、毛布を受け取った。 小林は開け放たれていたロビーの窓を閉め始める。 「この暑さの中、転がってるのは堪えるだろう。じきに空調が効いてくる。」 どうやら管理室に戻った際に、ロビーの空調を入れてくれたらしい。 また礼を言うと、小林は片手を挙げて、管理室に戻っていった。 .
/651ページ

最初のコメントを投稿しよう!