16人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
約束
ケンちゃん? あの日はケンちゃんと一生会えなくなるんじゃないかと、…本当に本当に必死だったんだよ?
空き箱に住所と名前を書いただけのポストの中に、ケンちゃんからの手紙を見つけた時には、……周りに人がいる事さえ構わず大声で泣いたもの。
ケンちゃんが上京してから初めて電話で話した時には、嬉しさと同時にあの日の辛い想いを思い出し涙が止まらなかったんだ。
泣きながら話す私を余所に、ケンちゃんは笑っていたよね……
「和香は可愛いなぁ」
私の気持ちも知らずに呑気にそんな事を言うから、怒っている自分が馬鹿らしくなってしまったんだっけ。
あの時ケンちゃんが約束してくれたんだよね、……
「もしまた連絡が取れなくなった時には、あの河川敷で和香が来るのをずっと待っている、……和香を見失うなんて絶対にないから」
あの約束は通信手段の発達と共に必要なくなっていったけれど、……七夕のあの夜の大切な約束は守ってくれなかったね?
ケンちゃんと私の、大切な大切な約束だったのに。
.
最初のコメントを投稿しよう!