banana

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「…で、俺ら…どーする?」 そんな事より、バター色の夕焼けがきれいで仕方なかった。 「葵さ、聞いてる?」 私の彼はそう言って苛つき、 噛んでいたガムを口の中で クチャクチャ言わせる。 「…ね、1つ言うてもいい?」 私は顔も見やんとそう言って、 やっぱり窓の外のバターを見る。 特等室。 そのワイドな窓には一面の金色。 贅沢かなぁって思ったけど、 今はこれぐらいがちょうどやなって思える。 「なに?」 黄色い髪の男。 そう…まるでバナナや。 全身決めまくってるコイツを、一時でもかっこええって思った時間。 「…ん?なんでショーンはいつも標準語なんやろって」 …ふふ。 ショーンやて。 自分で言うといて笑ける。 ほんまは松太郎(ショウタロウ)って名前やのになんでショーン? 「え?話ずれてんじゃん。 だってさ、関西弁って格好悪いし。 ね、それより葵、さっきの話」 松太郎は病室の鏡に自分の姿を映して、とさかみたいな髪の毛を直した。 「…あぁ…それか。 ええよ別に。私あんたを恨んだりせーへん」 …そう、別れ話の途中やった。 「…マジッ!?あっ…ごめん。 俺さ、こういうのってズルく思われたりすっかなーって悩んだけど、違うんだよね。 葵が病気になったから別れようじゃなくて、 そーゆーんじゃなくて、 だからその…合鍵いいかな?」 ……ふん。クズ。 「…そこの引き出しに入ってる。 ま、どうせ捨てるつもりやった」
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