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「千晶の事、俺はさっき『お嬢様』って呼んだだろ? ……あ、いや、呼んだでしょう?」
慌てて敬語で言い直したグランツさん。
敬語は使い慣れないらしい。
「あれは本当に『お嬢様』だから呼んだんですが───」
「クリスタライン家の養子に迎え入れられた方、ですわね」
グランツさんの話に割り込んだ女狐様。
浮かべる表情は、悪戯に成功した子どものソレ。
「千晶さんという日本人の名前を持つ転生者であり、女性であり、特に『お嬢様』と呼ばれる立場である方。該当するのは、それしかありませんわ」
あー……、もしかして、今まで千晶さんの正体についてずっと考え続けてたのかな。
で、グランツさん達、呆けた顔してる。
当たってるみたいだな。
「わーお、御名答。噂通り、聡明なお姫様なんだねー」
なんちゃってお嬢様の私とは大違いだ、と付け足された。
「それじゃあ、改めてちゃんと自己紹介させて貰うね。私は千晶=クリスタライン。今から十二年前、六歳の時に日本で交通事故に遭って、今のクリスタライン家の両親に拾って貰った転生者だよ」
明るく快活に、自身の身の上を語った千晶さん。
それにしても、俺の一つ上なのか。
「私が狙われ始めたのは三ヶ月くらい前の事。で、さっきの黒ずくめ連中───シュヴァルツァーって言うんだけど、アイツらが現れたのはつい最近」
それまでは楽勝で撃退してたんだけどねー、と付け足す千晶さん。
今は少し苦笑い。
「私って元々旅が好きでね、定期的に家には帰ってるけど、基本的に何処かに出掛けてて。グッツさん達は元はクリスタライン家が雇った用心棒で、私の我が儘に付き合って貰ってるの。本当はそろそろ家に帰りたいんだけど、シュヴァルツァーみたいな連中まで引き連れて帰る事になりそうで、ちょっと考え中」
ちょっとしか考えてないのかよ。
俺は内心で突っ込む。
「狙われる様になった原因に、何か心当たりは?」
代わりに、追加質問した。
「んー……、それが『コレ!』って思い当たらなくてねー。旅で色々と回ってるから、変なのに絡まれるなんてしょっちゅうだし」
心当たりがあり過ぎて分からないって事ですね。
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