セシル・ティア ~儚くも永久の物語り~

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豪奢な二頭馬車は、木々深い森の中を走っているが、その馬車を操る者は居らず、はぐれ馬かのように見える。 その二頭の馬には白い羽が生えているがそれは馬の体に不釣り合いなほど小さく、軽やかな足取りに合わせて羽ばたかせていた。 しかし、この馬車にはちゃんと人は乗っていた。 馬の足取りとは逆に、車内はしんみりと沈んだ空気で満ちている。 聖ディーン王国、第一王子のケイン・フィア=ディーンは、王宮を出発する前から不安に歪んだ顔を窓に向け、弟のセシル・ティア=ディーンはそんなケインにどんな言葉をかければ良いか、ほとほと困っていた。 その様子を向かいに座っていた、南地方のサラド国境地方官、サラド・ラグエル伯爵はそんな二人を見て微笑ましそうに見つめている。
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