キリ番:100:聖架さんへ

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「ターヤークー。ひまーっ!」 「お前なぁ・・・・・・」 とある村の安宿の一階。 テーブルが五つ程度しかない食堂兼酒場の一角に、ミカノとタヤクは腰を据えていた。 椅子に浅く座りべたりとテーブルに上半身を伏せるミカノを呆れたように眺める。 すでに時刻は昼を過ぎ、店の中には二人以外、別の客は見えない。 ミカノたちもとうに昼食を終え、食休みといったところであった。 【 An accidental friend 】 本来なら六人で旅をしているのだが、いまここに他の四人の姿は見えない。 前に立ち寄った町を出て四日。ようやく辿り着いたこの村で二、三日程度体を休めることにしたのだ。 先の見えない旅を続ける為、このあたりで一度資金調達を行おうという話を初日にした六人は、二日目である今日から活動を始めた。 植物に詳しいマサアとミナミは連れ立って薬草採取に出かけた。 キーナはケイヤとともにこの村の周りを散策し、魔物を狩って体の一部を売ろうとしている。 魔物の皮膚や角は武防具へ使われたりする。ものによっては高価な魔法の護符――マジックアミュレットへ加工されるため、買取額が大きいものもある。 当初、ミカノが魔物狩りに行きたいと言っていたのだが、ケイヤによって却下された。 キーナと違って大技ばかりを好んで使うミカノでは、魔物を跡形もなく、文字通り消し炭に変えてしまう恐れがあったからだ。 戦闘を好んでいる彼女は戦えば戦うほどハイになっていき、制御が効かなくなる。 そうなっては資金稼ぎにならない。 なおも言い募るミカノをキーナが窘めタヤクが宥めすかし、こうして今に至るというわけである。 「だからってさー、留守番はないでしょー。こんなとこでなにしてろってーのよ」 「部屋に引っ込んで寝てればいいんじゃないか?」 「イヤ。そんな気分じゃない」 「じゃあ村の中でも見て回るか」 「昨日キーナちゃんと回ってきた」 彼女の返答に、そういえば二時間くらいいなくなってた時があったなぁ、とタヤクは思い出す。 ミナミが「二人において行かれた!」と騒いでいたのだ。その時の様子を思い出して若干げんなりする。 良くも悪くもきっぱりさっぱりしているミカノや、いつでも人の考えを汲んで行動してくれるキーナと違って、ミナミの子供らしくも女の子らしい性格をタヤクは苦手としていた。
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