キリ番:100:聖架さんへ

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しかし、二時間程度で村の隅々まで回れるものなのか。 よほど規模の小さい村なのか、それともミカノのことだからよほど雑把にしか見て回っていないのか。 いずれにせよ、一緒に回っていたキーナはさぞかし大変だったであろう。 なおもぶちぶちと言い続けるミカノを眺めながら、さて何と言って宥めようかと思っていると、宿の扉が勢いよく開いた。 「ちょっと! 本当に誰もいないの?」 「だから言っただろ・・・・・・こんな、言ったら悪いが、田舎の方には兵士なんて来ないって」 入ってきたのは男女の一組だった。 ミカノたちと年の頃合いは同じくらいだろう。 宿の戸を開けて早々に口を開いたのは女の子の方だった。 大きく丸い目はきょろきょろと酒場の中を見回し、それに合わせてツインテールにまとめられた暗い茶色の髪がふらふらと揺れている。 愛らしい顔立ちの少女であったが、その眉間には苛立たしげに深いしわが刻まれていた。 その隣に立つ青年はそんな少女に一言二言声をかけ、聞いていないとわかるとため息を吐いた。 少し長い黒髪は邪魔なのだろう、適当に括られている。幼さは残っていたが、それなりに端正な顔立ちをしているのはわかる。 大方この気の強そうな少女に引っ張られるようにここにきたのだろう。 タヤクには二人の目的は分からなかったが、なんとなくこの青年は自分に似ているな、と感じた。 なにしろツインテールの少女がミカノに似た雰囲気があるのだから。 きっと苦労をしているんだろう、とわけもなく同情してしまう。 そんなことを思いながら二人のやり取りを眺めていたせいか、ふと少女と目があった。 ミカノは相変わらず気にした様子など見せず、ごろごろとテーブルに突っ伏している。 戸が乱暴に開けられた時も身じろぎ一つしなかった彼女は、興味のないことにはとことん反応しないのである。 今更目を逸らすのもなんとなく気まずく、そのまま首を傾げてみると、少女は青年の腕を引っ張りながらこちらへ歩み寄ってきた。
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