一章 早朝四時に起床する自称乙女。

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 にやけ癖がついてないか心配だ。表情には気をつけなければならない。大した理由は……ないけれど。  さて、話を逸らそうじゃないか。  犬は良い。  そこに真っ向から反旗を立てかける異論は、さすがに存在しないだろう。しないでほしいと思う。  犬は悪い。変な言葉だ。  ならば、犬は悪くない。  これじゃあ人間の醜さを語る人間みたいだ。眠くなる思考は終了。  私。橘和美にとって、犬は心の安らぎを運ぶ天使である。柔和なるフォルム。行動に一々伴う愛らしさ。犬に神様が居るならば、きっとそれらを従える神様も犬の顔をしているのではないか。と、私は健気な空想を膨らませている。  犬=イヌ=いぬ。  畏まった言い方をしなければ、私はわんちゃんが大好きだった。むしろそれが普通(スタンダード)だと思っていた。  なぜ犬は良いのかと問われれば、私はたとえそれが世間で言う間違いであったとしてもこう答える。  愛しているの!  むろん愛玩的な意味で。家族愛が間違いであるはずもないのだけれど、一応ね?   逸らせてない……かも。結論から言えば夢枕はガセだった。信じる者が馬鹿だった。昨日の私も、試すお馬鹿さんがまさか自分だったとは思っていまい。  私が“試しに望んだ夢“。詳細は至ってシンプルである。 【十種類以上のわんちゃん達に囲まれて、一匹一匹を愛でまくる】という健全な夢を望んだ。もふもふ、ふさふさ、ときたまにさらさらとした犬達と触れ合いたかった。  ……触れ合いたかった。  そんな純粋な乙女の願いがなぜ叶わないのか。なぜ私は心の底から遺憾を唱えたがっている? なんだかんだで、私の気持ちはゆっくりと落胆していった。
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