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「…でねー、そんでねー…」
夕食時、食べるより話すことに忙しい君の口。
「ほら、たっちゃん。またこぼしたよ?」
お世辞にも上手とは言えない手元の箸使いと、そこから零れ落ちたおかずの品々。
を、かいがいしくお世話する俺。
アイツの話なんて中身があるようでないし、それよりも目の前の大惨事が気になって仕方ない。
「もぉー。ちゃんと聞ーけーよーっ。ゆーちゃんのばかー」
口の周りにご飯粒やらなんやら付けたまま、ぶうっとホッペタを膨らます。
「わかった、わかったから(笑)」
食べ方、超へったくそ。
だけど全然、怒る気にならないんだ。
無邪気で可愛い、俺の弟。
(同い年なんだけど)
初めて会った時に感じた未知の感情は、幼さも手伝ってか心の奥底にしまうことができた。
そんな難しいことを考えるよりも、とにかく目の前の竜也と一緒に、毎日遊び歩くことに夢中で。
アイツと一緒に笑い合えてたら、それだけで幸せだった。
アイツが笑顔を向けてくれるだけで、嬉しくなれた。
そんな可愛いくて甘い、小学生時代。
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