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「あーあ、あたしもあっきーなくらい美人だったら、本田先生落とす自信あるのになぁ」
吐きそうになる溜め息を堪えていると、つい今しがたその姿を思い浮かべていた当人の名前が出てきた話題に、耳が反応した。
「えー、かなこの性格じゃ無理無理ー」
「あっきーなは中身もちゃーんと可愛いからねー」
「あたしもあっきーなに生まれたかったなぁ」
きゃははと湧く笑いに交えて、
「神園先生って……」
と思わず溢した言葉は、その場を、しん、と静まり返らせてしまった。
言い辛い雰囲気に怖気付きそうになりながらも、続く言葉を期待する輝く瞳達に観念して口を開く。
「神園先生って、……今も、生徒に慕われてるんだね」
らんらんと好奇に輝いていた瞳達は、俺の言葉を聴くなり、一斉に空気を抜いたように目力の威力を弱めた。
「やーっと話してくれたと思ったら、あっきーなの話題だしー」
「本田先生もあっきーなのこと気になるんだー」
「え……」
「でも先生駄目だよー。あっきーな、すーっごいカッコイイ彼氏居るんだってー」
か、……かっこ……?
「超ラブラブだって言ってたー」
ら、……らぶ……?
思いがけず、彼女が他人に話す自分のことを知ると、……心臓が直接くすぐられたようにこそばゆくなり、むずむずとした感覚に頬が熱くなる。
あの人は生徒の前で、一体どんな話をしているんだろうか……
微かな照れを悟られないように、軽く作った拳を口許に当て小さく咳払いをする。
「どっかの雑誌モデルだっけ?」
「え、超お金持ちのセレブだって聞いたよ?」
「違う違う、開業医の御曹司だって」
「……」
……誰だよ、それ。
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