その距離の測り方

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その距離の測り方

 小学校の頃の俺はエロいガキだったので雨が嫌いだった。理由は簡単だ。ゴミ捨て場とか堤防とか草むらに捨ててあるエロ本が濡れるのがイヤだったのだ。  濡れたおかげでページとページがくっついていたりすると、女が股を開いていても、俺の下半身は萎えたまんま元気になることはない。せっかくのお宝発見なのに、そうなっているとすごくもったいないと思ってしまう。  しかし、俺の連れだった正木は、度の強い黒縁メガネをかけ直して「晋介、濡れている写真の女が股を開いている、と思えばじゃない?」と笑いながらそう言った。  正木はいつだってそういう風に物事をポジティブに考える。  例えばクラスの男たちで流行っているファミコンソフトを買いそびれてすさんでいるときでも、ヤツはにっこり笑って「いつものようにエロ本を探しにいこう」と言った。あ、これは例になっていないか。まあいいや。とにかくポジティブなヤツなのだ、正木は。  そんな俺と正木も一年ごとに歳をくっていくうちに、中学生になった。すると、それまで一緒に行動していることが多くなったのに、別々の行動を取るようになった。  なにかが変わったのだろうか。
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