7月18日 某大学オープンカフェ

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「伏田島、夏休みの予定どうなった?」  四人掛けの丸テーブルに突っ伏した青年、三条雄一郎(サンジョウ ユウイチロウ)が、なんとも怠そうな様子で向いに腰掛ける青年に問いかけた。  問われた青年、伏田島新太郎(フタジマ シンタロウ)はそれに答えようと口を開いたものの、その声は後方から発せられた別の声に押しやられた。 「雄一郎!! だらしないし邪魔」  少し肩を竦めて振り返る新太郎と顔を上げて声の主を確認する雄一郎。  二人の視線の先には、少し跳ねっ返りの強い茶色がかったショートヘアの女性。 「おう、紗希お疲れ」  雄一郎が気の抜けた声で挨拶をすると、腰に手を当て二人を見下ろしていた女性は二人の間の椅子に手をかけ言葉を続ける。 「ほら雄一郎、邪魔だから起きて起きて。あっ新太郎、あたしはコーヒーでいいよ? ブラックね」  緩慢に起き上がり、今度は椅子の背もたれに盛大に寄りかかる雄一郎とため息をつきつつも素直に売店にコーヒを買いに行く新太郎。  この三人は民間伝承研究会というサークルに所属している。  たった三名のサークルだが、毎年夏休みには活動と称して小旅行を企画しているのだ。
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