始まりは何時も海の上から

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本日晴れ、凪、少々汗ばむ陽気。 この場所から見える景色は、物珍しさなどない、何処まで行っても代わり映えのしない物だ。 三等船室雑魚寝部屋の、隅の隅の一等人気な場所、窓際。 を、やっとこさ陣取って身を乗り出せば波一つ無い穏やかな海面。 この船に乗り込んでからずっと穏やかな海面を見ている。 初日こそ、旅に出るという高揚感と長い船旅というドキドキ感、同室の人間と仲良くなれるのかな等という緊張等で毎日飽きる事など無かったのだけど…ほんの数日ですっかり飽きてしまった。 時折遠くで魚が跳ねて、たまに海鳥の声が遠くから聞こえて…見慣れた窓の外の海面を滑るように進んでいる航海はいたって平和だ。 または、平和過ぎて退屈とも言う。 退屈過ぎるので日記でも綴る、と言うのは大分安直な理由だけど…ま、暇潰しなのだから良いだろう。 肩肘張らなくても気が向いた事を綴れば良いか。僕以外読まないし。 旅の思い出と称して後で見返して楽しんだりも出来るし。 旅の手記を綴ってます!なんていかにも旅人っぽくて格好し。 うーん、気のせいか何だか言い訳がましいな。 まあいいか。 とにかく、日記を綴る事にしよう。 穏やかな海で結構。 嵐が来て酷い船酔いするよりましだ。
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