玄関は、遠い

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「なあ、ゆうりん」 「ん? 何、繭……」 「この先思いやられるんやけど……」 「うん、繭……、諦めが肝心やで」 「あ! そうそう、」二人がこれからに対して憂鬱になっている中、六華は背負ってきた荷物を漁り、声を上げた。 「はい、繭」 「……、何、でしょうか……、これは……」  手渡された物体を、繭は斜めに傾けたり下から覗き込んだりと、不審気に問う。その答えはあっけらかんとした物だった。 「ヘルメット」  見たらわかるでしょ、といいたげな物言いに、繭はそれはわかるんだけど……、と口ごもった。 「え、私に被れ、と」 「それ以外に何があるの?」  安全第一の字が目に眩しい。手に持ったまま固まって動かない繭に、六華は言葉を続ける。 「神官様が要るだろうから、って渡されたんだけど……、要らないの?」 「いや! 要ります! 要ります!」  要らないなら返してよ、と奪われそうになったヘルメットを抱きしめる繭。この世界において神官様は特別な存在ではあるが、繭にとっては殊更であった。繭がまだこの二人に会う前から同年の友人であり、尊敬する人だったのだ。今でもだりぃ、と言葉を零しながらけだるげに籤を引く友人が目に浮かぶ。「あ、籠本じゃん」と引いた籤を見た神官様の声を容易に想像出来る。先日寄越してきた手紙を思い出し、はたと気づく。 「なあ、りっちゃん、勇者って何をすればええの……?」 「え、繭の方が詳しいんじゃないの」 うぉおぉぉおお、と繭は悶絶した。 「アイツ、なんやの……、頑張れって、どうすればええねん!」  内容は簡素なものだっだ。「勇者を選ぶ籤引いたら、籠本だった。頑張って。何とかなるよ。あ、あと人遣わすから詳しくはそこで」籠本でなくても引きこもりたくなるかもしれない。  この後も、繭がぐずったり、悠梨がわたわたしたり、あれも必要じゃないかとか、必要ではないのではとか、あまり話にならないような問答が続き、結局旅の出発は翌朝となった。
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