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レイニー・ブラッドに御注意を
「ここがあなたのお家…ですか。」
彼は黒革の手袋をはめた手で、真っ黒なハットをくいっと上げた。
そこから色素の薄い銀に近い髪が伸び、相変わらずの端正な顔を覗かせていた。
ハットの下から見える紳士的で優しそうな目に、私は思わずドキリと心臓を跳ね上がらせた。
「家…っていうか、私が住んでるトコ。学生ばっかりが住んでるボロアパートだよ。」
彼と目が合いそうになり、私はフイと視線をアパートの正面に向けてぶっきらぼうにそう言った。
別に怒ってるわけじゃないのだけど…。
なんとなく…恥ずかしくって。
「随分と趣のある建物です。」
「正直にボロアパートって言いなよ。ウチ、ビンボーだから高いマンションとかに住めないの。」
そうですか、と彼は意味ありげな笑みをこぼした。
「では、案内して頂けますか?」
「う、うん。」
私はぎこちなく歩き、彼をこのボロアパート…もとい私の通うトゥルトデピネレー学園の学生アパートに迎え入れた。
私の心臓はバグバグとやかましく鳴り、ボロボロに朽ちたアパートの扉を開く手は汗が滲んでいた。
なぜ、こうなったのか…。
いや、なぜ彼と出会ったのか説明する必要があるだろう。
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